以前読んだ「潜水士の道」とは趣の違ったものです。こちらは主人公と出会った著者の思いで綴られています。
東日本大震災のボランティア活動をしていた著者が、たまたま見かけた印象深い人物について興味を抱き、それを纏められています。
主人公の吉田氏はもともと仙台で潜水を生業にしていた家庭で育ち、その違和感もなくその道に進むも伝統的な上下関係や先輩たちのいじめから一匹狼として独立して活動していくが、頼まれたら断れない性格から、全く儲からない遺体捜索の第一人者となるも、そちらが足を引っ張るかたちで破産してしまう。
それから立ち直っていける見通しが立ったときの大震災。自らも被災しながら津波で行方不明者捜索を懸命にするも、そこに他人を救出したいが遺体を引き上げているこの矛盾に惨状を面白おかしく喋ることで自己消化せざるを得ない主人公の葛藤が垣間見えます。
震災から10年経った今だからこそ読んでみてはいかがでしょうか。